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父に、おまえは犬の子だといわれた。 幼い頃から、おまえは犬の子だと聞かされて育ってきた。ある程度大きくなって生意気なことも言えるようになったころ、ならばあなたは犬と契ったのですかと反論したことがある。すると父は、ばかやろう、俺が犬なんかとやるか、俺はおまえを橋の下から拾って来ただけだ、と叫び、大きな音を立てながら廊下をのしのしと歩いて去っていった。 橋の下、などと言われては益々うそくさかった。私は何故父があんな見えすいた嘘をつくのかわからなかった。 高校のとき、友達と帰宅途中の橋の下に捨てられた仔犬を見つけたことがある。それを見て私は初めて「犬の子供が橋の下に捨てられる」などという状況が本当にあるのだと知った。私も友人もその犬を拾うことは出来なかったから、暫く仔犬の頭をなでたり抱き上げたりして弄んだ。わたし、わたしね、と、私は何か内側からの衝動を抑えきれず言葉を口にした。わたし、この犬と同じなんだ。そう言うと、友人は一瞬驚いた顔をし、それから仔犬と私を見比べてからいぶかしげに言った。 『そういえば、似てるわね。』 何年かして、父は亡くなった。誰も私を犬の子と呼ぶ人間はいなくなった。やがて私は父の存在もその言葉も忘れ、私のことを天使のようだと言ってくれる人と結婚をし、その人の子供をはらんだ。 戌年戌の月戌の日戌の刻、産声を上げた子供は犬の顔をしていた。私は、恐怖のあまり、絶命した。 |
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